書評『Eric Sink on the Business of Software 革新的ソフトウェア企業の作り方』

Eric Sink on the Business of Software 革新的ソフトウェア企業の作り方

将来、自分がソフトウェアの製造・販売を生業にして生きる上で、自分のビジネスの指針となる本を私はこれまで探し続けていたのですが、ソフトウェアを作る本は数あれど、ソフトウェア企業を作る良書にはなかなか出会うことができませんでした。

そうして、長い間いろいろな本をあさっている中、出会ったのがこのEric Sinkの本でした。

この本は、小さなソフトウェア企業(Micro ISV: Independent Software Vender)を作る方法を紹介した、ビジネス本です。

ある時期、私はこの本をずっと枕元に置いておき、ことあるごとに読み返していたほど、自分の中では大切な本です。

『Eric Sink on the Business of Software 革新的ソフトウェア企業の作り方』の目次
日本語版への序文
訳者序文
序文
著者について
謝辞
イントロダクション
第1部 起業家
  第1章 小さなISVについて
  第2章 石の樽に不平をこぼす
  第3章 自分の会社を始める
  第4章 ギークのためのファイナンス入門
  第5章 マイクロISVの探求
  第6章 私のマイクロISVの第一報
  第7章 もっと失敗しよう
第2部 人
  第8章 小さなISVに必要なのはプログラマではなく開発者
  第9章 ギークの支配とMBAの戯言
  第10章 採用の危険
  第11章 すごいハッカー != すごい社員
  第12章 「ソフトウェアにおける高音域」に対するコメント
  第13章 キャリア計算
第3部 マーケティング
  第14章 マイクロISVのための製品アイデアを探す
  第15章 マーケティングは後処理ではない
  第16章 競合を選ぶ
  第17章 年相応に振る舞う
  第18章 ギークの小手
  第19章 建てる場所に注意
  第20章 ゲームは進む
  第21章 展示会に行こう
  第22章 小さなISVのための雑誌広告掲載ガイド
第4部 マーケティング
  第23章 マイクロISVのための製品アイデアを探す
  第24章 マーケティングは後処理ではない
  第25章 競合を選ぶ
  第26章 年相応に振る舞う
エピローグ あとはただやるだけ
索引

「起業」や「会社経営」というテーマを扱った書籍には、会計、マーケティング、人事に関するトピックが含まれていることが多いのですが、この本の中にもこれらのトピックは扱われています。

ただし、すべての内容はソフトウェアの開発者や、Geek向けに噛み砕いた内容に「変換」されているため、通常のビジネス本とは一線を画した内容になっています。

さらに、この本の興味深いところは、Eric Sink自らが小さなソリティアのソフトウェアを開発してリリースし、どれくらいの収益が上がるかチャレンジする過程を、細かに記述している点にあります。

多くの自己啓発本・ビジネス本はやり方だけ提示し、「これをすれば成功するはず」と鼓舞してくれますが、逆にこの本は「自分はこうしてみた」と、チャレンジした結果を教えてくれているのです。

結果的にソリティア・ソフトはあまり売れず、残念な結末を迎えてしまうのですが、そんなことまで赤裸々に掲載している本はなかなかないはずです。

ビジネスというのは決まった道筋がないので、実際のビジネス・チャレンジの一部始終を掲載してくれているのは、大変参考になります。

ソフトウェアでビジネスをする上で、こんなに親切なビギナー本はないと思います。

この本から始めて、もっと細かいマーケティング、会計などの本に進んで、知識を深めていっても良いかもしれません。。

おすすめの一冊です。